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46話 褒め言葉が招く新たな火種

Penulis: みみっく
last update Terakhir Diperbarui: 2025-11-06 06:00:23

「よし。いつもの可愛い顔だな」

 「可愛い」と言われて機嫌が直ったシャルが、にこにこと笑みを浮かべていると、すぐに馬車はミリアの屋敷の前に到着した。馬車の扉が開くと、玄関の前にミリアが心配そうな顔で立っているのが見えた。

 ユウヤを見つけた途端、彼女の顔に安堵の色が広がったが、すぐに隣に座るシャルロッテの姿を視界に捉え、その表情は再び曇っていく。

「ユウヤ様……またシャルロッテですの?」

 ミリアは、頬をぷくりと膨らませて、不満をアピールしてきた。その拗ねた表情は、ユウヤにしか見せないものだった。

「ユリの相手を頼もうと思って呼びに行ってた」

 ユウヤは、咄嗟に思いついた言い訳を口にした。

「はぁ……そうですか……」

 ミリアは、納得できない様子で、ユウヤをじとっとした目で見た。その視線は、嘘をついているんじゃないかと探るように、ユウヤの心を見透かそうとしていた。ユウヤは、仕方なくミリアに近づき、彼女の耳元に口を寄せた。

「シャルにユリの相手をしてもらえば、二人の時間が出来るんじゃない?」

 ユウヤが耳元で小さくささやくと、ミリアの目が一瞬で大きく見開かれた。彼女の頬は、みるみるうちに赤く染まり、口元が嬉しそうに緩んでいく。

「わぁ……そうですわね♪」

 屋敷のリビングには、ユウヤ、ミリア、そしてシャルとユリが集まっていた。ユウヤは、機嫌が直ったミリアに内心で安堵しつつ、二人の紹介を済ませようと口を開いた。

「この子がシャルで、こっちがユリね」

 友達を紹介するような、ごく簡単な言葉だった。だが、その瞬間、隣にいたミリアの表情が凍りついた。

「何ですか、その紹介は!」

 ミリアに、呆れたような、怒ったような声で注意をされた。

「え?……ダメ?」

 ユウヤは、ミリアの剣幕に戸惑い、きょとんとした顔で尋ねた。

「全然ダメですわ。もぉ!」

 即答でダメだと言われ、ミリアは小さくため息をつくと、身振り手振りを交えながら説明をしてくれた。

「ユウヤ様の紹介の仕方では、安心してお話が出来ないじゃないですか。どこの誰だか分からず、地位も分からないですので、お互いに警戒をしながら話すことになりますわっ」

「じゃあ……自分達で自己紹介をして」

 ユウヤは、面倒くさそうな顔でそう言った。

 ん……普通の紹介じゃダメなのね。公式じゃないから良いと思ってたけど……非公式でも国名と身分を紹介しないといけないのか。ん……第何王女だっけ……覚えてないって。まあ自分達で好きに自己紹介をすれば良いんじゃない……。ユウヤは、頭をかきながら、全てを二人任せにした。

 ユウヤに促される形で、二人の王女は自己紹介を始めた。

「え? は、はい……ミレーナ王国の第二王女のユリシスです」

 ユリは、少しどもりながら、緊張した面持ちでそう言った。

「えっと……ファンベル王国の第二王女のシャルロッテですわ」

 シャルもまた、ユリシスに倣って、少し照れくさそうに自分の身分を明かした。

「はい。良く出来ました。お互いに仲良くしてね」

 ユウヤは、まるで子供を褒めるかのように手を叩いて言った。

「え!? シャルロッテ王女殿下を呼んできたのですか……? ユウヤ様……これ以上、私を緊張をさせないでください……」

 ユリは、困った表情でユウヤに視線を向けた。その声には、明らかな困惑が滲んでいる。

「え? シャルだよ? 緊張はしないでしょ?」

 ユウヤは、心底不思議そうに首を傾げた。

「シャルロッテ王女殿下ですよ……?」

 ユリが、戸惑いを隠せない様子でユウヤを見てきた。お互いに王女様なんだから、緊張をするものなの? ユウヤには、その感覚が全く分からなかった。

「うん。シャルは、可愛いオーラしか出してないじゃん」

 ユウヤは、純粋な感想としてそう口にした。その瞬間、隣にいたミリアの視線が、まるで鋭い刃物のように突き刺さるのを感じた。

「ユウヤ様……シャルロッテが可愛いと?」

 ミリアの声は、先ほどまでの甘さが嘘のように低く、冷たい響きだった。

「シャルは、可愛いでしょ?」

 ユウヤは、ミリアの尋常ではない反応に戸惑いながらも、素直な気持ちを返した。

「ふんっ」

 ミリアは、露骨に不機嫌な顔をして、ユウヤから顔をそむけた。その頬はぷくりと膨らみ、怒っていることを全身でアピールしている。うん。不味い……。ユウヤは、冷や汗をかきながら、今後のことを考えていた。

 ミリアが不機嫌になってしまったのを見て、ユウヤは焦った。なんとか場の空気を変えようと、必死に言葉を探す。

 その間に、シャルはユウヤの言葉を純粋に受け止めて、嬉しそうに飛び跳ねた。

「わぁ~い♪ ユウヤ様に可愛いって言われちゃいましたぁ~」

「ユリも可愛いし、ミリアも可愛いじゃん?」

 ユウヤは、公平に褒めることで、この場の雰囲気を和らげようとした。だが、それがまた新たな火種になることに、彼はまだ気づいていなかった。

「私もですか? え?」

 ユリが巻き込まれてオロオロしていたが、褒められたことが嬉しかったのか、頬を赤く染めて俯いた。

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